新聞縮小版で調べ物をする
少し前の新聞の囲み記事に、「若い記者はすぐにインターネットで調べ物をしようとする。そんなときは縮小版で調べてこいと言う」などと書かれていた。
これ、なんとなくわかる。
ネットでの調べ物は、効率が良いかもしれないが、見たそばから忘れるし、全体がつかみづらい。
それではと、1982年のスペインワールドカップのことを、新聞縮小版で調べてみることにした。
この大会は、イタリアが決勝で西ドイツを下して優勝するのだが、当時の日本の報道はどうだったのか。
図書館に行き、毎日新聞縮小版を借りて読んでみた。
まず、目を引いたのが、事前の優勝予想。
以下、1982年6月毎日新聞縮小版からそのまま引用。
| 国 | オッズ |
|---|---|
| ブラジル | 2 |
| 西ドイツ | 3.3 |
| スペイン | 7 |
| アルゼンチン | 10 |
| ソ連 | 10 |
| イングランド | 14 |
| イタリア | 16 |
| フランス | 20 |
| ベルギー | 33 |
| チェコ | 33 |
| ポーランド | 33 |
| ユーゴ | 33 |
優勝したイタリアの下馬評の低いこと。そしてベスト4のフランス、ポーランドも期待値が低い。
ちなみに、2018年W杯、6月5日時点のオッズは以下。
| Odds | Team |
|---|---|
| 5.00 | Brazil |
| 5.50 | Germany |
| 6.50 | France |
| 7.00 | Spain |
| 10.00 | Argentina |
| 12.00 | Belgium |
| 17.00 | England |
| 26.00 | Portugal |
| 26.00 | Uruguay |
| 29.00 | Croatia |
| 34.00 | Colombia |
| 51.00 | Poland |
| 51.00 | Russia |
| 101.00 | Denmark |
| 101.00 | Mexico |
| 101.00 | Switzerland |
| 151.00 | Egypt |
| 151.00 | Nigeria |
| 151.00 | Senegal |
| 151.00 | Serbia |
| 151.00 | Sweden |
| 201.00 | Peru |
| 251.00 | Iceland |
| 251.00 | Japan |
| 301.00 | Costa Rica |
| 301.00 | Morocco |
| 401.00 | South Korea |
| 501.00 | Australia |
| 501.00 | Iran |
| 751.00 | Tunisia |
| 1001.00 | Panama |
| 1001.00 | Saudi Arabia |
当時、NHKで放送されたのは全52試合のうち16試合。BS放送が無かったので、まあまあ多かったのではないか。
事前に優勝本命とされていたブラジルの中心人物は「白いペレ」ジーコ。
「白いペレ」という愛称は初めて聞いた。しかも読んでみると、「本人はそう呼ばれることを嫌がっている」と書かれている。じゃあ何でそう呼ぶのか。
新聞を読んでいて、目を引いたのは、アルジェリアの躍進。
初戦で西ドイツに勝った試合は、「ワールドカップ史上最大の番狂わせ」と書かれていた。
そしてグループリーグ2勝1敗とするが、これまた新聞に「永遠に語り継がれる史上最低のゲーム」と書かれた、西ドイツ対オーストリアが1-0に終わり、グループリーグ敗退する。
ちなみに、16試合しか放送されなかったNHKは、「史上最大の番狂わせ」は放送が無く、「史上最低のゲーム」は放送された模様。
ちょっと面白かったのが、大会終了後「海外客125万人を見込んでいたが、実際スペインに訪れたのはたったの15万人」と書かれていたこと。
こんなに予想が外れるものか?
葛藤
国のスタイルとは何か
「日本らしいサッカー」「日本のスタイル」などと語られることがあるが、この言葉に対して不安になる。
1982年の新聞には、「勝ったのはイタリアだが、最高の試合をしたのはブラジル」と書かれていた。
そして、「ブラジルは個人技でドリブルをするという印象を持つかもしれないが、それは一昔前のブラジルである」とも書かれていた。
おや?
2018年現在でも、「ブラジルは個人技」と思っているサッカーファンは多いと思うが。
さらに、「イタリアはカテナチオと呼ばれる強固な守備の国と言われているが、この大会は攻撃的に戦っていた」とも。
これも、おやっと思うところ。
2006年に優勝したときも、攻撃的に戦って勝ち取った優勝などと言われたが、実はイタリア=カテナチオは、サッカーファンの思い込みなのではないか。
とすると、「日本らしいサッカー」も、幻を追っているだけで、そんなものは無いか、あるいはそれでは勝てないのかもしれない。
縮小版ならではの楽しさ
縮小版で調べる楽しさは、同時期の他の記事を読めることである。
これが面白い。
当時の話題は、ロッキード事件の公判。言った言わない、政治の腐敗等々。
また、女子中学生が連れ去られて首を切られた事件が大きく取り上げられていた。
今とあまり変わっていない気がする。
広告も面白い。
飲むだけでやせる、運動不要の飲み物or食べ物の広告。聞いたことが無い商品である。もし本当なら今も有名なはず。
東芝が大々的にパソコンの広告を売っているのも、今を知っているから面白い。
ビデオカメラがこーんなに小さくなりました、という広告では、拡声器のような大きさのレンズを右手に持ち、肩にボストンバッグくらいの機材を抱えていた。
そして当時話題だったのが、「テレビ付き腕時計」。なんとびっくり、映像は白黒。